今や、赤ちゃんの40人に1人は体外受精によって生まれています。10年前では74人に1人だった数字から見ても大幅な増加傾向にあることが分かりますが、これには昨今の晩婚・晩産化が大きく影響しているのだとか。そして、不妊は女性だけでなく男性にも50/50の原因があることが分かってきた現在、ART(体外受精)への注目はさらに高まっていると言われています。

そこで今日は、人工授精などの一般的な不妊治療とは違う「高度生殖医療または生殖補助医療」と呼ばれるART(体外受精)について詳しく調べてみました。

ART(体外受精)とは

ART(Assisted Reproductive Technology)とは、配偶子である精子と卵子に対して生殖を補助する治療法であり、赤ちゃんを希望するカップルがタイミング法や人工授精でも妊娠に至らなかった場合のステップアップ治療として選ばれているいくつかの不妊治療の方法を指します。

人工授精が、「採取した精子を子宮内へ人工的に入れることで受精や着床をサポートする」と言った、できるだけ自然妊娠に近い形で行う治療法であるのに対し、ARTは「子宮からいったん卵子を出して体外で受精させた後、その受精卵を再び子宮内へ戻す」と言った、いわば不妊治療の最終ステップとも呼べる高度な生殖医療となります。

ARTは、加齢による卵子や精子の劣化、精子の運動能力の低下や精子数の減少、さらには女性の生殖器官である卵管機能や卵巣機能に問題があった際にも広く使われる不妊治療であり、男女の年齢にも寄りますが人工授精よりも妊娠の成功率が高いと認識されています。

その、気になる妊娠の成功率ですが、1回あたりの人工授精の成功率が5から20パーセント程度であるのに対し、体外受精は20から40パーセント近くあると言われています。健康な20代女性の自然妊娠の成功率は1回あたり25から30パーセントであることから、この数字を見ても体外受精による妊娠率がいかに高いかが分かると思います。

また、その他の違いとして、人工授精は治療自体は約1日あれば終わるのに対し、ARTは排卵誘発剤を打ったり、採卵日の調整などもあって数日間の入院が必要な場合もあるため、妊活に費やす日にちを多めに確保する必要があります。

ですが、最近では自宅でも排卵誘発剤を飲めるようになり、忙しい女性でも自分に合ったペースでスケジュールを立てることが可能になりました。

ART(体外受精)の種類

体外受精(IVF‐ET)

体外受精とは、女性の子宮から卵子を採取し、体外で精子と受精させた後、その受精卵を再び子宮に戻してあげる方法です。

体外受精は、人工授精などで行う体内で受精させる方法が難しいと診断された場合に用いられる手法ですが、受精自体は体外で行われたとしても赤ちゃん自身は子宮内で育つことから、ママになる実感としては自然妊娠と何ら変わりはないのが特徴だとも言われています。

詳しいやり方としては、超音波で卵巣を確認しながら排卵直前の成熟した卵子を採取します。その一方で、配偶子である精子を男性から採取し、洗浄濃縮後に運動能力に富んだ健康な精子を選びだします。そしてシャーレの中で卵子1個に対して、5万から10万の精子を合わせて培養し受精させます。最後は、細胞分裂がある程度進んだ受精卵を、柔らかいチューブで子宮に戻した後、着床させます。

体外受精の対象となるのは、一般的な不妊治療と言われるタイミング法や人工授精では妊娠が望めなかった場合や、女性側に卵管機能、卵巣機能に問題がある場合、男性側に乏精子症や精子無力症などの症状がある場合です。

体外受精の主なデメリットとしては、卵巣過剰刺激症候群と言った排卵誘発剤の副作用や、卵子の採取時の出血や麻酔のトラブル、排卵誘発剤を使用する際に起こる多胎妊娠の可能性などです。

その他には、子宮外妊娠や流産の危険性も決して無いとは言えませんので、十分にリスクを理解した上で治療を進めることをおすすめします。また、一度に複数採取した卵子は、多胎を防ぐ意味でも使う受精卵は2個以内と決められていますが、残った卵子は受精卵、胚盤胞の段階で凍結保存をすることで、次回の治療に用いることも可能です。

顕微授精(ICSI)

体外受精が同じシャーレの中に精子と卵子を入れて自然に受精するのを待つのに対し、顕微授精では「人工的に精子を卵子の中へ注入し受精させる」という点で、体外受精よりも一歩踏み込んだ形の不妊治療法と言えます。

主なやり方としては、精子と卵子を採取するまでは体外受精と同じ行程なのですが、顕微授精では採取した卵子に針を刺して精子を注入して受精させる方法です。これは正式名称を卵細胞質内精子注入法(ICSI)と言い、男性側に重度の受精障害(精子の運動能力低下、精子減少症や乏精子症)がある場合によく行われています。

顕微授精には、透明帯貫通法、囲卵腔内精子注入法、卵細胞質内精子注入法と言ったいくつかの方法がありますが、中でも1番行われている卵細胞質内精子注入法は、顕微鏡を使いながら細いガラス管で卵子1個に精子を直接注入するため、非常に効率がよく高い成功率で妊娠できると言ったデータがあります。

反面、デメリットとしては、体外受精同様女性の身体に大きな負担がかかると言った点や、費用が体外受精の費用が1回10万から100万円かかるのに対し、顕微授精や30万から100万だと言われている点が挙げられます。この治療費の高さが、顕微授精を選択したくても出来ないと言った治療の妨げにもなっているようです。

ギフト法(GIFT)

こちらは、卵子と精子を卵管内に注入して、女性の卵管内で受精させる方法です。

体外受精や顕微授精では採取した精子と卵子を体外で受精させてから再び子宮内に戻しますが、ギフト法では体外に取り出した精子と卵子を一緒に卵管内に戻す方法となっています。

この方法は女性の体内である卵管内で受精させることから、より自然妊娠に近い状態で受精することが可能になり、それは体外受精と比べても高い成功率が期待できます。

しかし、卵管内へ移植する場合は、女性の卵管の左右のどちらか1つでも疎通性があることが大前提であり、女性に卵管通過障害がある場合は、まずは子宮内膜症の治療を行い改善させてから行う治療法となっています。
また、腹腔鏡操作など、体外受精と比べるとより複雑な治療となるため、最近では行われる機会が減っていると言われています。

ジフト法(ZIFT)

ジフト法とは、ギフト法と同じく、採取した精子と卵子を子宮ではなく卵管内に移植する手法です。

ギフト法では、採取した精子と卵子を一緒にして迅速に卵管内へ戻してから自然に受精するのを待つのに対し、ジフト法では顕微授精後にシャーレの中で1日培養させて受精したことを確認後、卵管内に戻すと言ったやり方です。

ちなみに、ギフト法でも精子と卵子を顕微授精した後に卵管内に戻す方法を採る場合もありますが、これは受精後すぐに卵管内に戻すため、確実に受精しているかは分からない状態での移植となります。

さらには、ジフト法で行ったシャーレでの培養を、もう1日長く培養して分割卵になった状態の受精卵を卵管内に戻すEIFT法と言った方法もあります。

しかし、体外受精における培養期間は3日から4日程度だと言われていますので、その内の2日間をシャーレで培養するEIFT法に比べると、ジフト法の方が体内で培養される時間が長く得られるので、自然に近い形で受精卵が成長できるのはジフト法であると言えます。

ART(体外受精)の成功率を上げるためのコツ

体外受精で妊娠できる確率を上げるためには、まずは生殖機能の老化を防ぐことです。卵子の劣化や子宮のトラブルは加齢だけが原因ではなく、日頃の生活環境や食生活にも大きく関係してきます。まずはバランスの良い食事や適度な運動を心がけて、身体の冷えを改善することでホルモンバランスを整えることが大切です。

冷えなどで身体の血流が悪くなると、子宮や卵巣などに酸素や栄養が十分行きわたらないため、生殖機能が衰える危険があります。

生殖機能の衰えは卵子の老化や質の低下につながるため、必然的に体外受精の成功率も減少します。日頃から十分な睡眠を取りストレスを蓄積させないよう、健やかな生活を送ることが妊娠しやすい身体作りの基本と言えそうです。