長い間、不妊は女性側の問題とされてきました。しかしそれは間違いで、不妊症の原因の半分は男性側にあるといいます。

近年では男性が不妊症の疑いで医療機関を受診することも増えており、晩婚化、晩産化に伴って不妊症の問題が世間でも広く注目されています。

では、男性不妊とは何が原因で起こるのでしょうか、また、女性の不妊症とはどう違うのかをまとめてみました。

精子と卵子は作られ方が全く違う

卵子は胎児期に作られます。女性は産まれたときに既に約100万個の卵子を持っていて、その後は新しく作られることはありません。初潮を迎えるときには約30万個にまで減っており、その後年齢と共に徐々に減っていきます。35歳時点では数万個になり、年齢がこれ以上になると高齢出産と呼ばれ、妊娠率もぐっと下がります。

一方精子は、毎日新しく作られますが、女性と同様に30歳後半から年齢が上がるにつれ精子の質は低下していきます。精子の数が減ったり運動率が低くなれば、妊娠はしにくくなります。

男性不妊はどうやって調べる?

男性の不妊が疑われたら、まずは精液検査を受けることになるでしょう。
精子は約三カ月間かけてつくられているので、一度目の検査結果が良くなかった場合は1~3週間程度後にまた受けることになります。
そうして数回の再検査の後に、男性不妊か否かが診断されます。

WHO(世界保健機構)が2010年に定めた精液の状態の基準値は以下のようになっています。

  • 一回に射精される精液の量 1.5mL以上。
  • 1mL中の精子の数(精子濃度)1500万個以上。
  • 精子の運動率 動いている精子が40%以上。
  • 正常な形態の精子が占める率 4%以上。
  • 生存している精子が占める率 75%以上。
  • 白血球数 1mL中100万個未満(炎症があると増加する)。

上記の基準値に照らし合わせて、不妊の原因としてどのような状態が考えられるのかを診断します。

男性不妊の原因

検査からわかる、主な男性不妊症の原因を見ていきましょう。

乏精子症

上記の基準値に照らし合わせて、精子濃度が1500万個以下の場合、乏精子症と診断されます。これは造精機能障害のひとつで、射出された精子中の精子が少ないために、自然妊娠が難しいとされるものです。

WHOの基準値は精子濃度1500万個ですが、自然妊娠しやすい精子濃度は1mLあたり4000万個以上と言われていますので、この基準値を超えていれば妊娠しやすいというわけではありません。

しかし、1mLあたり数百万個の精子濃度で自然妊娠したケースもごくまれにありますので、他の不妊原因も考慮しながら治療にあたるのが良いでしょう。

乏精子症の治療法としては、精索静脈瘤手術、ホルモン療法、投薬治療などがあります。

無精子症

無精子症は閉塞性無精子症(OA)と非閉塞性無精子症(NOA)とに区別され、OAは、精巣内では精子が作られていても、精管が塞がっているために射精精液中に精子が全く出てこない状態をいいます。

NOAは、精管が塞がっていないけれども射精精液中に精子が全く出てこない状態です。

精巣内で精子が全く作られていない場合だけでなく、途中で精子の成長が止まっている場合、作られてはいてもごくわずかの場合、も、
このNOAに相当します。

治療法としては、OAの場合は精路再建手術、NOAの場合はホルモン療法があります。

妊娠するためには、上記の治療法の他に、精巣または精巣上体の精子を回収して顕微授精を行う方法があります。しかしこれは、わずかにでも精巣に精子がつくられている場合に限ります。

精子無力症

射出精液内の精子の運動率が基準値を下回る状態を言います。基準値では動いている精子が全体の40%以上ですが、
妊娠しやすい運動率は50%と言われています。

先天的な原因の他に、前立腺炎やおたふくかぜ等による精巣炎、高熱、精索静脈瘤等の後天的原因も考えられます。
治療法としては、ホルモン剤などの投薬療法、または軽度と診られる場合は漢方薬やサプリメントなどの非ホルモン療法が行われます。
尚、重度の精子無力症として、精子が全く動いておらずしかもほとんど死んでいる状態を精子死滅症、
精子は生きているがほとんど動いていない状態を精子不動症(カルタゲナー症候群)といいます。

奇形精子症

奇形精子とは、精子の形が正常とは異なるもののことを指します。
頭部の奇形、尾部の奇形の大きく二つに分けることができますが、特に頭部に異常のある精子は授精しにくいと言われています。
正常とみなされる精子が15%以上あれば自然妊娠の可能性があり、4%未満だと奇形精子症と診断されます。
奇形精子を正常精子に治す、もしくは変える、といった方法はまだ見つかっていません。
ですので、妊娠するためには、形に問題のない精子を選んで顕微授精を行います。
女性側の年齢が若い場合は、人工授精や体外受精から始めることもあります。

膿精液症

白血球数が1mL中100万個以上あると、膿精液症と診断されます。
大腸菌などの細菌や前立腺の炎症が原因であることがほとんどで、精子の運動率が低下していることもあります。
妊娠しても、炎症物質によって精子がダメージを受けていたりすると、流産の原因になることもあると言われています。
膿精液症がわかったら、妊娠活動の前に抗生物質などの薬物療法で感染症を治療することが必須です。

まとめ

異常が精液検査から診断される主だった男性不妊症の原因です。治療は女性側の不妊治療と合わせて行う必要があるものも多いので、夫婦で協力して進めていくことが大切です。