トランス脂肪酸といえば、2013年にアメリカの食品医薬品局(FDA)が食品の使用を禁止するというニュースで初めて耳にしたという人も多いのではないでしょうか。

日本ではトランス脂肪酸の制限などは行っていませんが、実は生殖機能にも影響を及ぼすちょっと怖い成分。これから子どもを作りたいと考えている人や、自身や家族の健康を意識する人は、ぜひ知っておきたい知識をご紹介します。

トランス脂肪酸ってなに?

トランス脂肪酸はもともと食品に含まれている天然のものと、油脂を加工したり精製する過程で発生する2種類があります。天然のものとしては牛肉、羊肉、牛乳、乳製品が挙げられますが、含まれる量はわずかで特に問題ではありません。注意しなければならないのは人工的に作られてしまったトランス脂肪酸です。

植物性の油というのは、常温に置いておくと酸化しやすい液体で、加熱するとすぐに劣化してしまいます。これを扱いやすくするために、水素を加えて化学構造を変化させ、半固形で酸化や加熱に強い油脂を作り広く使われるようになりました。この過程で作り出されてしまうのがトランス脂肪酸です。

また油を高温処理をする際にもトランス脂肪酸は発生します。植物油の精製時に無味無臭にするための高温処理で発生したり、外食産業で使われる揚げ物の油は常に高温で調理されるため、トランス脂肪酸が含まれていると考えられるのです。

トランス脂肪酸が多く含まれる食品とは

トランス脂肪酸が多く含まれる食品として、一番にあげられるのはマーガリンファットスプレッドでしょう。

よくスーパーではバターと並んで陳列されていますが、実は内容はかなり違うものです。バターは動物性脂肪が原料のため、自然に存在する脂肪で作られています。バターに含まれているトランス脂肪酸は天然のものであるため、そこまで体に悪いものではありません。一方で、マーガリンは植物性脂肪に水素を加え作られた人工的なもので、トランス脂肪酸はバターの3.5倍も多く含まれています。

ファットスプレッドは聞きなれないかもしれませんが、マーガリンから油分をマイナスしたもので、同じような容器で販売されています。カロリー控えめで健康的なイメージがありますが、トランス脂肪酸は多く含まれています。

また、もう一つ注意したいのが食品はショートニングです。これはマーガリンから添加物と水分を除いたもので、「サクサク」「パリッ」とした食感を生み出すため、市販されているお菓子やパン、クッキーや冷凍食品、加工食品などに豊富に含まれています。揚げ油としてコンビニや外食産業でもよく使用されています。

トランス脂肪酸は生殖機能を低下させる?怖いリスクとは

トランス脂肪酸が恐ろしいのは、日々何気なく口にすることで、気付かないうちに体に害を与えてしまうことです。近年注目されているのは、トランス脂肪酸を摂取することによる生殖機能の低下です。トランス脂肪酸を多く摂ると、すい臓から分泌されるインスリンに対する抵抗性が強くなり高血糖となります。糖尿病が発症しやすくなるほか、卵巣や精巣の働きが悪くなり、卵が成熟しなかったり、精子の形成にトラブルが発生するなど、生殖機能に影響を及ぼすことがあるのです。

過剰なトランス脂肪酸の摂取は、炎症が出来やすい体質と変化させ、女性の場合は子宮内膜症の発症率が高くなるというデータも。

男性の場合、精子濃度が低くなるという研究結果も報告されています。

Trans fatty acid intake is inversely related to total sperm count in young healthy men.
Hum Reprod 2014; 29: 429(スペイン)

生殖機能の影響を考え、子どもを望む夫婦はぜひ気を付けたい成分なのですが、子どもももちろん要注意です。アトピー性皮膚炎やアレルギー、肥満体質、骨の発達不全、心臓疾患やがん、認知機能の低下などの高いリスクもあります。

海外では規制する国も多いけれど…日本では規制なし

アメリカではトランス脂肪酸の使用は2018年以降は原則禁止と発表されていますが、一歩早くニューヨーク市では10年前から外食産業が使用することは禁止しています。他にはオランダではトランス脂肪酸の含まれた製品の販売を禁止、デンマークでは食品への含有率を明確に定めており違反したら罰則を受けなければなりません。

日本は他の国に比べると摂取する脂質の量が比較的少ないこと、また塩分の摂りすぎの方が問題視されていることから、トランス脂肪酸という一成分だけに着目した規制は行われていません。しかし最近は日本でも食事の欧米化が進み、生活習慣病などの増加も問題視されています。日本は規制されていないから安心、なのではなく、規制されていないからこそ、私たち自身が気を付けなければならないことなのです。

トランス脂肪酸を摂りすぎないために心がけたいこと

トランス脂肪酸を過剰摂取しないためには、「油」に着目して商品を選び食事をすることです。例えばパンに塗るならバターやオリーブオイルを。調理に使う油は、出来るだけ国産の品質の良いものを選びましょう。油を作る製法として、「圧搾搾り」「コールドプレス」と明記してあるものは安心です。

またスナック菓子は控えめに、外食もフライドポテトなどの揚げ物は極力避けるのが無難です。洋菓子もトランス脂肪酸は多く含まれます。クリームのたっぷりのったケーキ、ビスケットやクッキーよりも、脂質のあまり含まない和菓子や果物を選ぶといいですね。

トランス脂肪酸を意識することは、食事の見直しや健康について考えることにもつながります。リスクを考え、日頃から体により良いものを選べるようにしたいですね。