「婚活」に続き、「妊活」という言葉が市民権を得てから数年が経ちます。妊娠しやすい時期を知る、妊娠しやすい体作り、不妊治療、といったことに夫婦で取り込むのが妊活です。
そんな妊活中の夫婦に昨今注目されているのが、「ピニトール」という成分です。
ピニトールには不妊の原因を取り除き、妊娠しやすい体にしてくれるという効能があるといいます。それはなぜなのでしょうか?
ピニトールって何?
ピニトールとはビタミンB群の一種で、糖尿病予防に役立つ成分として注目されてきました。
その理由は「植物性インスリン様物質」という別名があることからもわかるように、血糖値を下げるホルモン物質「インスリン」と同様の効果を身体にもたらすからです。
インスリンは血液中のブドウ糖を身体の細胞組織にエネルギーとして変換する働きを持っています。そうすることで身体に活力をもたらし、血糖値をコントロールするのです。
糖尿病とは体内のインスリン分泌が足りない、または何らかの理由で分泌しても正常に働かなくて、血液中の糖分をエネルギーに変えることができないために血糖値が下がらず、高いままの状態が長く続くことをいいます。
血糖値を下げることがなぜ不妊の改善につながるかというと、不妊の原因の一つである「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」は、血糖値が高いことによって誘発される可能性が指摘されているからです。また、糖尿病は男性の勃起不全(ED)を引き起こす原因にもなりますので、ピニトールで血糖値を下げることによってEDの改善も期待できます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が不妊の原因となる理由
PCOSとは排卵障害の一種です。卵巣には卵細胞がたくさんありますが、通常月に一つずつ成熟します。
卵細胞は卵胞という袋に包まれており、育つにつれてこの袋は大きくなっていきます。じゅうぶん成熟するとこの袋は割れ、卵細胞が排卵されます。
これが月経のおおよそ1週間~10日後くらいに行われる「排卵」です。
PCOSは卵細胞が育ちきらず、未熟な卵胞が排卵されないまま卵巣内にたくさんとどまってしまっている状態を指します。排卵が起こりにくいことで月経不順や無月経が起こり、これが不妊につながるのです。
他方で、黄体ホルモンの異常で月経過多や不正出血が起こることもあります。
また、卵胞の中では男性ホルモンであるテストステロンが作られるので、卵胞をたくさん抱え込むことによって体内の男性ホルモンが増え、ホルモンバランスが崩れる原因ともなります。
女性全体の実に2割が多嚢胞性卵巣を持つとも言われ、その中でPCOSと診断された女性の約7割は排卵障害を起こしています。
そのため、PCOSが不妊の原因となっている女性が多いのです。
ピニトールが多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を改善する?
PCOSになる原因はまだよくわかっていませんが、現在ではホルモンバランスの乱れによる排卵困難、糖代謝の異常による血糖値の上昇(これによる糖尿病、糖尿病予備群)が深く関わっているのではないかと考えられています。
また、多嚢胞性卵巣を持つ女性がすべてPCOSと診断されるわけではなく、中には特に治療をしなくても自然と治癒する場合もあります。
ピニトールがPCOSを改善するとされるのは、血糖値を下げる効果があるからです。
つまり、原因が血糖値の高さでなければ、残念ながら効果は期待できません。
しかし、妊活中から葉酸を飲むことが推奨されているように、妊活中からピニトールを摂取することで妊娠糖尿病の予防にもなりますから、適切な量を摂取している分には問題ありません。
ピニトールを摂取するには?
ピニトールを多く摂取できる食べ物として一番に挙げられるのが、アイスプラントという野菜です。
葉の表面に水滴がついているような形が特徴的で、食べると少々の塩味が感じられます。日本ではまだそれほど流通している野菜ではないので、手に入れにくいかもしれませんね。
もっと身近な食材ですと、大豆製品です。
特に大豆と豆乳に含まれていることが確認されており、毎日の食事に取り入れることでピニトールの摂取量を上げることができます。
しかし、残念ながら食事だけでは明らかな効果を感じるほどのピニトールを摂取することは困難ですので、ピニトールを効率的に摂り入れるにはサプリメントが現実的です。
ピニトール含有サプリメントを飲む際の注意点
現在ピニトールによる副作用の報告はありませんが、まだ日本においてはさほど浸透していないサプリメント成分ですから、報告がないからといって副作用がまったくない、ということにはなりません。
必ず用量を守って摂取するようにしましょう。
ピニトールはビタミンB群の一種であり、ビタミンB群は水溶性なので体に溜まってしまう心配はありませんが、一日の摂取上限量は1200mgとされていますので、これを超えないように気をつけましょう。
また、糖尿病治療でインスリンを投与していたり、PCOSの治療でホルモン剤を処方されているなど、既に医療機関による治療が始まっている場合は、自己判断でサプリメントを飲むことは控えてください。
サプリメントは薬ではありませんが、身体に何らかの影響を及ぼすものです。
必ず医師に相談して、飲んでも問題ないかどうかを確認するようにしましょう。
まとめ
ピニトールを不妊治療に役立てるためには、第一に何が原因で不妊となっているのかを知ることが必要です。
もし、PCOSが原因であるならば、サプリメントを飲んでも良いかどうか、かかりつけの医師に必ず相談しましょう。