
高齢出産を控える女性に限らず、お腹の赤ちゃんに染色体異常があるかどうかはとても気になるところです。
そんな中、2013年にスタートした新型出生前診断を受ける女性が大変増えているのだとか。
新型出生前診断は、従来の羊水検査とは違って母体が受けるリスクが低いと言ったメリットがある一方で、「命の選別」が進むことへ懸念にも注目が集まっています。
そこで今日は、新型出生前診断の基礎知識や検査内容、費用やその問題点について調べてみました。
新型出生前診断とは
新型出生前診断(NIPT)の正式名称は、非侵襲的出生前遺伝学的検査と言います。
この検査は、妊娠10週~18週の妊婦を対象に血液中にある胎児のDNAの断片を解析して、3つの染色体について異常が無いか判定をします。
検査対象となる染色体は、「ダウン症の21トリソミー」と「精神遅滞や発育異常の13トリソミーと18トリソミー」です。
採取された妊婦の血液のほとんどはアメリカの検査会社に空輸され、約2週間ほどで結果が分かります。
もしそこで陽性反応が出た場合、確定診断として羊水検査を受けることになりますが、羊水検査が15週~19週の妊婦対象であることや検査結果に3週間ほど要することを考慮して、新型出生前診断は遅くとも17週までに受ける妊婦が多いようです。
また、新型出生前診断を受ける際に検査の前後には、専門医による「遺伝カウンセリング」を受ける必要があります。
この遺伝カウンセリングとは、検査結果から判明した疾患を遺伝的要素もふまえて医師が患者に説明をすることを言います。
検査後に陽性が出た場合には、妊婦やその家族の気持ちを尊重した上で、社会的かつ倫理的な立場から患者の選択肢をサポートしていきます。
現在国内では、日本医学会が「じゅうぶんな遺伝カウンセリングができる専門医がいる」と認定した施設のみが、臨床研究としてこの検査を行うことができます。
新型出生前診断を受けられる人、かかる費用
新型出生前診断は全ての妊婦が受けられる検査ではありません。
検査対象となるのは、出産予定日の時点で妊婦が35歳以上(但し凍結胚移植の場合は採卵時に34歳2カ月以上)であること、過去の妊娠や出産の際に胎児や赤ちゃんに染色体異常が見つかった、妊婦かその夫が染色体転座保因者である、今回の妊娠で超音波検査や母体血清マーカー検査で胎児が染色体異常の可能性があると言われた、現在妊娠10週~18週である、と言った場合です。
しかし、この検査はあくまでも自由診療となりますので、妊婦やその家族が「出産する前に調べる必要はない」との考えの場合は調べる必要はありません。
検査にかかる費用は、保険適用外と言うこともあり、通常の検査の約2倍の21万円程かかります。
もしも、陽性反応が出た場合は、その後羊水検査を受けることになるため、さらに10万~15万円(こちらも保険適用外)が必要となってきます。
また、現在新型出生前診断は、限られた総合病院や大学病院でしか受けられないため、自宅が遠方にある場合は交通費や宿泊費なども別途かかってきます。
新出生前診断のメリット
検査が採血だけ
20cc程度の採血のみで行える検査であるため、妊婦の身体への負担が少なく済む。
流産の危険を回避できる
流産のリスクなど、胎児が危険にさらされる可能性のある羊水検査や絨毛検査と比べて安心できる。
検査可能期間が羊水検査よりも早くできる
新型出生前診断は10週目から可能なため、迅速に対応することができる。
検査期間が羊水検査よりも長い
羊水検査が妊娠15週~19週程度なのに比べて、新型出生前診断は10週目から18週目(場合によっては22週目まで)まで検査期間があるため、精神的に余裕を持って調べることができる。
母体血清マーカー検査より精度が優れている
従来の母体血清マーカー検査に比べて、新型出生前診断の検査精度の方が高い。
陰性と判明した場合、羊水検査を受ける必要がなくなる
精神的にも安心感を得られ、羊水検査による肉体的負担もなくなる。
新型出生前診断のデメリット
かかる費用が高額
保険適用外となるため、全額自己負担になる。
新型出生前診断ができる病院が少ない
正式に日本医学会から認定を受けた総合病院または大学病院での検査のみ。
日本医学学会が認定している病院一覧:
検査できる妊婦は限られている
検査を受ける条件が厳しいため、希望しても受けられない場合がある。
検査で陽性判定が出た場合の葛藤
限られた時間の中で、出産か人工中絶するかと言った苦しい選択を迫られる。
精度が高いとは言え、スクリーニング検査である
ダウン症検査で陽性が出た場合も10%~20%はダウン症では無い可能性がある。
また、陰性と判定された場合でも、100%ダウン症ではないと言う保証は無い。
検査結果に3週間~4週間かかる
採血後アメリカの検査会社で検査されるため、結果に時間がかかる。
問われる「命の選別」
まず、新型出生前診断を受ける際の注意点として、この検査は100%確実な結果が出るわけではないということを前提に置いておいてください。
もし仮に陽性反応が出ても、それは「可能性が高い」と言うだけで「絶対」では無いのです。
その後の羊水検査や絨毛検査で確定判断をしていくことになりますが、その結果によって「産む・産まない」の決断を迫られるのは、妊婦にとっての精神的ダメージは測り知れません。
検査をするかしないを含めて、結果によっては出さなければいけない答えの選択肢など、夫婦でじゅうぶんに話し合い意思の疎通を交わしておくことが大切です。