「黄体機能不全」という言葉をご存じでしょうか。黄体ホルモンには、排卵期に基礎体温を上げる役割や、子宮内膜をふかふかにしてくれる働きがあります。黄体機能不全とは、その黄体ホルモンをつくり出す「黄体」がうまく機能しなくなる疾患です。

不妊症や流産の原因にもなりやすい「黄体機能不全」。妊娠を望む女性にとっては意識しておくべき疾患ですが、その知名度はまだまだ低い状態です。不妊に悩む女性にもぜひ知っておいてほしい黄体機能不全、今回はその原因や症状、検査や治療、予防法などをまとめてご紹介します。

黄体の働きを知ろう

LHとFSHって?

FSH(卵胞刺激ホルモン)は、卵巣の中にある卵胞を刺激して発育する働きがあります。LH(黄体形成ホルモン)は、成熟した卵胞に対して排卵を促す作用や、排卵後の卵胞に対して黄体化を促す作用があります。どちらも脳の下垂体から分泌される、卵巣を刺激するよう働きかけるホルモンです。

LHとFSHの働き

簡単にいうと、FSH (卵胞刺激ホルモン)は卵胞を発育させ、LH(黄体形成ホルモン)はそれを排卵させる働きをしているということです。そしてこの2つの数値が低いと、卵子の成熟や排卵がうまく行われなくなってしまうのです。

黄体の働き(卵子の成熟から排卵後までの流れ)

  1. FSH(卵胞刺激ホルモン)に刺激され、卵巣の中で卵胞が十分に発育します。

    このとき卵胞ホルモン(エストロゲン)が増量し、子宮内膜を増殖させます。

  2. 脳下垂体が卵巣に向けてLH(黄体化ホルモン)を大量に分泌し(LHサージといいます)成熟した卵胞を刺激します。

    この時期に排卵検査薬に強い陽性反応が出ます。多くの場合この16~24時間後に排卵が起こります。

  3. 排卵後、卵巣の中に「黄体」という組織ができます。

    「黄体」は「黄体ホルモン(プロゲステロン)」を分泌します。プロゲステロンは子宮内膜をふかふかに厚くして赤ちゃんを迎える準備を促します。排卵後に基礎体温が上昇するのも、このプロゲステロンの働きによるものです。

  4. 妊娠が成立すると、黄体や黄体ホルモンは維持され、基礎体温の高い高温期が続きます。妊娠が成立しなかった場合は、排卵後およそ14日ほどで黄体が萎縮し、基礎体温も下がります。その後使わなれなかった子宮内膜のベッドがはがれ落ち、生理が始まります。

黄体機能不全の症状

上記のような黄体の機能が低下し、黄体ホルモンの分泌が不十分になることを、黄体機能不全といいます。

FSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌が低下

卵胞の成熟ができなくなったり、遅くなったり、いわゆる排卵障害を起こしてしまいます。

LH(黄体形成ホルモン)の分泌が低下

卵胞が育ってもLHサージ(排卵に向けて黄体化ホルモンが大量に分泌される)が起こらず、排卵できなくなります。

子宮内膜の感受性低下

本来は黄体ホルモンが分泌されることで、子宮内膜がふかふかに厚くなり、受精卵が着床しやすくなりますが、子宮内膜が育たず薄いままになってしまいます。

黄体機能不全は基礎体温で自覚できる

基礎体温をつけていると、波形から黄体機能不全かどうかを読み取ることができる場合があります。妊娠に向けた体調管理にもなりますので、基礎体温をつけることをおすすめします。

排卵の有無や着床しにくい状態にあるかなどを読み取る目安として、いくつかの波形のパターンをご紹介します。

高温期が短い(12日未満)

高温期を保ちきれず低温期が長くなっていると、黄体機能が弱っていて黄体の萎縮が早まっている可能性があります。この場合、排卵があっても着床しにくく、排卵がない可能性もあります。

高温期に途中で体温が低下する

高温期を保ちきれず一時的に体温が低下するので、高温期のグラフの線が安定せずジグザグになりがちです。排卵日の体温の急降下があれば排卵はしていますが、黄体ホルモンの分泌量が低く、妊娠しても流産しやすくなります。

排卵日のあと、高温期に入るのに時間がかかる

低温期から高温期に移行するのに何日もかかる状態。グラフでいうと、排卵日と思われる体温の急低下から、高温期までの線がななめに長く伸びています。通常は1日で高温期に入りますので、これも黄体機能の低下が原因と考えられます。

低温期が長く、排卵に時間がかかる

生理開始日から排卵するまでに時間がかかる場合は、卵胞の発育が良好でなく、FSHが低い可能性があります。排卵が起こりにくい状態といえるでしょう。

不安になったら病院で検査を

基礎体温表上で上記のような状態が見られる、不正出血があるなどの症状があれば、不安を長引かせずに病院で検査をしてもらうのが一番確実です

検査では、基礎体温表を見ながらの問診と、採血が一般的です。問診では、生理の長さや出血量、生理周期など聞かれます。それ以外にも不正出血や生理についての症状があれば、基礎体温表にメモをしておくと安心です。

採血では、プロゲステロンの値が正常かどうかを確認するため、排卵日から1週間後に行います。また、検査をする病院や症状によっては子宮内膜症や卵巣膿腫、子宮筋腫などの病気がないかを調べるため、膣内エコー検査や子宮内膜の組織を採取しての検査をする場合もあります。

黄体機能不全の治療

一般的に黄体機能不全の治療は、時期に合わせて薬を使用していきます。

排卵前は、生理が始まってから一定期間、排卵誘発剤を飲み続けます。

排卵期や排卵後は「絨毛性性腺刺激ホルモン」「プロゲステロン」を注射や内服薬で取り入れます。

卵胞の発育が低下している場合は、排卵前に飲み薬で卵胞の成熟を促す場合もあります。

※関連記事:不妊治療の強い味方、排卵誘発剤を理解しよう

ここが大切!黄体機能不全の予防法

黄体機能不全を予防、改善するポイントは、体を温めることです。

体が冷えて熱が足りない状態だと、体は生命維持に重要な肺や心臓などの機関に優先的に熱を送ります。末端冷え性の方の手や足が冷たいのと同様に、卵巣や子宮などの直接生命維持に関わりのない機関にも熱が回ってきません。

その結果、黄体機能不全を引き起こし、生理不順や無排卵になってしまったりするのです。シャワーではなくお風呂につかる、温かい飲み物を飲む、適度な運動をするなど、体を内側と外側から温めるようにしましょう。

黄体機能不全は、比較的治りやすい疾患といわれています。健康な卵巣、子宮を保つためには、ストレスを溜めないこともとても大切です。不安があっても1人で悩まず、医師に相談してみましょう。