卵巣嚢胞または卵巣嚢腫という言葉をご存知でしょうか。

字面から想像すると、何か大変な病気のように感じますが、実は大半の女性に少なくとも一つの嚢胞が出来ると言われています。いたずらに恐れたりせず、どういったものなのか、正しい知識を得ることから始めましょう。

卵巣嚢胞は自覚症状がない?

卵巣は子宮の左右両側に一つずつ付いている、親指大の生殖器です。ここで卵子が成熟し、卵管を通って子宮内に輸送されます。卵巣嚢胞とはそのどちらかの卵巣の一部に出来た袋状の腫瘍で、中に液体が溜まる病気です。

多くの女性に卵巣嚢胞が出来ると言われており、自覚症状のないまま治ることがほとんどです。無自覚のため、婦人科検診や内科などの他の病気の検査の際に偶然見つかることが多く、5cm未満の場合は経過観察に留まります。

5cm以上になると、卵巣捻転や破裂の危険性がありますので、手術を考慮に入れる必要があります。

またもし捻転や破裂が起こると、急に激しい腹痛や吐き気、発熱、めまいといった症状が出て、緊急手術が必要になります。

このような緊急事態でなくても、嚢胞が大きくなると症状が現れる場合もあります。

主な症状としては、下腹部が膨らんだ感じ・違和感、排便時の痛み、性交痛、強い月経痛、吐き気やおう吐、等です。自覚症状と進行具合は比例しませんが、上記のような症状を感じたら、なるべく早く医療機関を受診しましょう。

卵巣嚢胞の種類

卵巣嚢胞は袋状の腫瘍に液体が溜まる病気ですが、内容物はその種類によって異なります。中でも「機能性嚢胞」と呼ばれるものが最も多く、この嚢胞は「濾胞性(ろほうせい)嚢胞」と「黄体嚢胞」の二つに分けられます。

卵子は、卵巣内にある卵胞という嚢の中で成長しますが、この卵胞は時期が来ると破裂し、卵子が放出されます。この時卵胞が何らかの理由で破れないと、卵胞内部の液体が残って卵巣嚢胞となる場合があり、これを「濾胞性嚢胞」といいます。

一方「黄体嚢胞」は、卵胞が卵子を放出した後に溶解することなく破れた部分が閉じて残ってしまうと、そこに液体が溜まり卵巣嚢胞となるものです。

他に代表的なものは以下の通りです。

漿液性(しょうえきせい)嚢胞
さらっとした水のような液体が溜まります。
粘液性嚢胞
どろっとした粘性の液体が溜まります。中がいくつかの部屋に分かれていることが多い嚢胞です。
皮様(ひよう)嚢腫
脂肪、毛、歯、軟骨、骨などが溜まります。
子宮内膜症性嚢胞
本来子宮内にできるはずの子宮内膜が卵巣内にでき、月経の度に子宮内膜が剥離・出血しますが、排出できないので嚢胞となり溜まっていきます。一般にチョコレート嚢胞と呼ばれます。
嚢胞腺種
卵巣の外面にできる、非がん性の腫瘍です。

数は少ないですが、人によっては多嚢胞性卵巣症候群と呼ばれる症状につながる場合もあります。これは卵巣に小さい嚢胞がたくさんできる病気で、卵巣を肥大させます。放っておくと不妊の原因になることもあります。

卵巣嚢胞はがん化する?

基本的に良性の腫瘍なので、卵巣嚢胞自体が生命をおびやかすことはありません。ただ、まれに悪性の腫瘍の場合もあるので、検査はした方が良いでしょう。

子宮内膜症が原因でできるチョコレート嚢胞は、その0.7%が悪性と言われています。確率は低いですが、定期検査は怠らないようにしましょう。

検査と治療

片方の卵巣の腫れが確認されたら、CTスキャンやMRI、超音波などを用いて卵巣嚢胞かどうかを調べます。

しかし前述したように、卵巣嚢胞はできても自然に消えてしまうことが多いため、大きすぎない場合はすぐに治療に入らずにそのまま経過観察となります。数週間~数か月後に再検査をし、状態が変わらない、または大きくなっている場合は、追加の検査(妊娠しているか否か、ホルモン値は正常か、卵巣がんの可能性はないか等)をしてから卵巣嚢胞の治療に入るべきかどうか診断されます。

治療法としては、薬物療法と手術です。

薬物療法では避妊ピル等のホルモン剤を使い、一時的に閉経状態にすることで嚢胞の成長、または新たな嚢胞ができることを防ぎます。

妊娠を希望している場合は使えません。

手術には腹腔鏡手術と開腹手術があります。腹腔鏡手術には体外法と体内法があり、まずは腹腔鏡で骨盤内を観察し、嚢胞の大きさと周囲との癒着がないかを確認します。癒着がない場合は体外法が選ばれ、癒着がある場合は体内法が行われます。

体外法は、簡単に言うと腹部に小さな穴(約2~3cm)の穴を開け、そこから嚢胞を引きずり出して患部を切り取り、正常な卵巣を吸収糸で修復して戻す方法です。

嚢胞内の液体は、引き出す前に特殊医療器具で吸引しておきます。

体内法は、鉗子を使用して体内で施術する方法です。

卵巣に癒着している部分を可能な限り剥がし、内容液を吸収してから嚢腫を取り除きます。そのまま体内で正常部分を縫い、修復します。腹腔鏡手術のメリットは、創部が小さいので出血が少なく、体への負担が少なく回復が早いことです。

しかし、嚢胞が大きい場合は開腹手術となり、摘出した嚢胞がもしも悪性だった場合、そのまま子宮摘出手術に移行することもあります。ただし子宮を摘出すると妊娠は望めなくなりますので、妊娠の可能性を残す場合は嚢胞部分だけの摘出となり、再発の可能性も残ります。

最後に

卵巣嚢胞を予防する方法はありませんが、定期的に検診を受けて、早期発見をすることで重症化を防ぐことができます。