子宮膣部びらんという言葉を聞いたことがありますか?
字面だけ見てもどんなものなのか想像しにくいですが、何となく子宮の病気関係なのでは・・・と考える人も少なくないと思います。
実は、20~40代の8割の女性に発生するとされている状態なのです。詳しく見ていきましょう。
子宮膣部びらんは病気ではありません
子宮膣部びらんとは、子宮膣部という子宮の入り口(膣の奥の突き当りの部分)がただれているように見える状態を指します。
「びらん」とは「ただれている」という意味ですが、この場合実際にただれているわけではないので、突き詰めて言うと言葉としては間違っています。
なぜこのような状態になるのかというと、エストロゲンというホルモン分泌が活発になると、子宮頸管という子宮の外部と内腔を結ぶ道の奥にある腺上皮が外側にめくれます。腺上皮は表皮が薄くて血管が透け赤く見えるので、ただれているように見えるのです。
病気でそのような状態になるわけではなく、活発なホルモン分泌のせいなので、ホルモン分泌が盛んな20~40代の多くの女性に見られる状態です。年齢を重ねてホルモン分泌が減ってくると、だんだん元の状態に戻ってきます。病気ではなく、女性の自然な生理的変化と考えてよいものです。
子宮膣部びらんだとどんな症状が起こる?
以下のような症状を自覚した場合、子宮膣部びらんの可能性があります。
- おりものが多くなった。
- 生理などの時期とは関係なく出血がある。
- 鮮血の場合もあれば、茶色っぽいおりものの場合もある。
- 出血は長くは続かず、気付かないうちになくなっている。
- 排尿や排便後に少し赤っぽかったり茶色っぽかったりするものが付いたりする。
- 性交の後に鮮血が出る。
- 痛みを感じない。
いずれの症状の場合も深刻になることはなく、放置しておいても普通は問題ありません。もしも婦人科を受診して、医師に「子宮膣部びらんです」と診断されたら、病気ではないと言われたことと同じです。
病気でなくても治療が必要になることも
前述したように子宮膣部びらんは病気ではありませんので、通常は何もしなくても大丈夫なのですが、腺上皮のようなデリケートな部分がむき出しになっていると、タンポンや性交時の刺激など、少しの刺激でも出血しやすくなります。
また、デリケートな部分だけに細菌感染などによる炎症も起こしやすく、子宮頸管炎などを起こすと黄色っぽいもしくは茶色っぽいおりものが増えて、不快に感じることもあります。そして炎症が慢性化すると、腰痛や性交痛、頻尿につながります。
もしも不正出血が多かったり痛みを伴う場合は、婦人科を受診しましょう。
診察には、膣鏡を使用しての視診、びらん部分から採取した細胞で行う細胞診、コルポスコピー診、細菌検査などが行われます。症状を鎮めるための治療法としては、軽度の場合は、膣内を洗浄して、抗生物質を服用するといった治療が行われます。
薬物治療で効果がない場合、電気的方法、冷凍法、レーザー法などを用いて治療を行います。
これらの治療の目的は、びらんの部分を除去して、分泌が少なく出血を起こしにくい粘膜を再生させることです。
治療は通常入院の必要はなく、外来の処置で済みます。治療の初めは週2~3回の通院が必要で、終了までには2~4週間ほどかかります。
ただし処置をしても、ホルモン分泌がある限り子宮膣部びらんの症状を繰り返す人は多いです。
また、子宮膣部びらんの起こる場所は子宮頸がんの発生しやすい場所です。びらんの症状は子宮頸がんの初期症状と似ていますので、子宮膣部びらんの治療に入る前に、がん検査を行うことが一般的です。
子宮膣部びらんの例外
上記のような、放っておいても問題のない生理現象としての子宮膣部びらんは、仮性びらんや偽びらんと呼ばれることがあります。
これは対して真性びらんと呼ばれるものがあるからですが、この真性びらんは、膣表面の粘膜が崩れ、下の組織がむき出しになったものです。
これはベーチェット病や頸管炎、梅毒、子宮頸がんなどの場合にまれに起こる病変です。
この場合の症状はびらんだけに留まらないので、軽い出血やおりものくらいならば、まず仮性びらんと捉えてよいでしょう。
子宮膣部びらんでも妊娠はできる?
子宮膣部びらんは病気ではなく、状態なので、直接不妊の原因になることはありませんし、妊娠後の胎児の成長にも影響はありません。
ただし、もしも細菌感染などをして慢性的に炎症を起こしていると、子宮膣部が肥大して不妊につながることがあります。
炎症が慢性化すると痛みなどを感じるはずですから、そのような場合はすぐに婦人科を受診して、医師に相談した方が良いでしょう。
子宮膣部びらんの予防法は?
子宮膣部びらんは生理現象なので、予防する術はありません。
月経が起きている生殖可能年齢ならば誰でも起こり得ますし、症状が出ていても年齢を重ねてホルモン分泌が減ってくれば自然と治まってきます。
しかし、生理周期ではないのに出血があるという状態は、やはり見過ごせない状態ですので、出血の量や回数など少しでも不審に感じたら医師に相談するのが良いでしょう。
時にそのような、特に心配することはないかもしれないけど念のため、という受診で、がんなどの重大な病気の早期発見につながることがあります。ここ数年婦人科検診を行っていない人や妊娠活動中の人は、体出している何らかのサインかもしれないと考え、一度婦人科を受診することをおすすめします。