乳幼児や子供を、お母さんやお父さんが膝の上に載せたり腕に抱いて、または添い寝しながら絵本を読んであげる読み聞かせには、いくつもの素晴らしい点があります。

親子の触れ合いと安心感

赤ちゃんがお母さんに抱っこされると泣きやむのは、おなかの中で馴染んでいたお母さんの心音と体温に因るものだという説があります。乳児から幼児の時期に十分なスキンシップを図ると、子供の情緒は安定します。自分が庇護されていて、不安があれば保護を求め十分に甘えることができると知っている子供は、自信を持ち、やがて外の世界へ目を向けることができるのです。

人の話を聞き、話の内容が何かを指していることを学んでいくコミュニケーションの第一歩として、お母さんやお父さんの優しい声、ぬくもりを感じながらの読み聞かせは最高の手段です。

家事をしながら、スマホをいじりながら、大人同士お喋りしながらなど、何かしながらではなく、しっかりと向き合い対話する読み聞かせは、忙しいお母さんやお父さんにとって一見大変そうに思えますが、15分、20分という短い時間でもしっかりと相手をしてもらった子供は安心してよく眠ったり、一人遊びをします。

忙しいから、何かしながら相手をするのではなく、忙しいからこそしっかりと向き合う時間を作る方が、意外に効果的かもしれません

情操教育効果

読み聞かせてくれるお母さんやお父さんの声に耳を傾ける癖がついた赤ちゃんは、他人の話を聞くことができます。そして絵本の中の出来事や登場人物に感動し喜怒哀楽を体験するだけでなく共感します。

この他者への共感性は、自分の気持ちだけでなく相手の気持ちを考えるという重要な思考回路につながります。昨今、他者への共感性が欠けていると思われる事件が増えていますが、感情を司る大脳辺縁系の働きが活発になり成長するのが乳幼児期なのです

また本の中でいくつもの人生や成功体験、達成感を味わうことで、自分が今いる狭い日常だけが世界ではないということを知ることができます。豊かな世界を持つ子供には自己肯定感が強く、ポジティブな傾向があります。

知的好奇心の刺激

もし乳幼児を無色、無音、無臭の何の刺激もない環境に置いたらどうなるでしょう。五感の発達は著しく滞り、知的能力も同じ月齢、年齢の乳幼児に比べ低くなります。脳や神経は刺激を受けることで成長していくのです。

絵本は、子供にとって身の周り以外の世界に触れる最初のチャンスです。

本は、活字と想像力を通し、一人の人間に数多くの人生や体験を可能にすることができます。日本に住む私たちと、全く異なる文化や生活習慣、立場を持つ人が同じ体験や感動を共有できるのも読書の素晴らしさです。絵本は、子供がこの世界を面白いと感じ、好きなものや興味あるものを見つける一番簡単な方法かもしれません。

言語は全ての学問の始まり

絵本を通し、子供は言葉を覚え、言葉がいろいろなものや様子を表していることを自然に学びます。

国語能力は全ての勉強の基礎だと言われるのも、言語がすべての学問の始まりだということと共通していると思います。実際、全国の公立小中学校を対象とした「全国学力・学習調査」では、「毎日読書をする」に「はい」と答えた子は総じて読解力の問題の正答率が高かったのです。

目が見えず話せず耳が聞こえない三重苦のヘレン・ケラーは、”water”という綴りが水を指し、全てに名前があると理解した瞬間から、目覚ましい発達を遂げました。

読み聞かせの奇跡的な力

ニュージーランドのクシュラという女の子は染色体の異常による複雑で重い障害を抱えていました。彼女は精神的身体的な発達の遅滞が著しく、腎臓、心臓その他の異常が次々と発見されます。

3歳になっても物を握ることもできなければ、視力が届く範囲は30cm程度でした。医師も治らないであろうと診断した絶望的な日々、クシュラの母親は、苦しみで眠ることもできないクシュラを膝に抱き、生後4ヵ月目から毎日10冊以上の本をクシュラに読み聞かせ続けたのです。

諦めず毎日毎日読み聞かせを続けたところ、5歳になったクシュラは本が読めるようになり、彼女の知性は同年齢の子供の平均よりはるかに高くなっていました。医学的な診断を超えたクシュラの成長は「クシュラの奇跡140冊の絵本との日々」という本にもなっています。

一見奇跡的な出来事ですが、これは読み聞かせという地道な努力を延々と積み重ねていくことで起こった経過です。本にはそれだけの力があり、普通のしかし真摯な努力の積み重ねがどれほど偉大かを教えてくれます。

活字離れ

日本は世界でも識字率の高い国でありながら、テレビ、スマホ、ゲームによって活字離れが著しいと言われています。

2年前の文化庁調査では、1ヵ月に3冊以上の本を読むと回答した割合は17.9%で、読書量が減っていると考える人が65.1%にも上っています。読書量の減少の理由について聞いたところ、1位は「仕事や勉強が忙しく、読書の時間がない」、次いで「視力など健康上の理由」、「(携帯電話やパソコンなど)情報機器で時間が取られる」、「テレビの方が魅力的である」と続きます。

確かに電車に乗って周りを見ると、誰も彼もがスマホを覗き込んでいて、読書している人を余り見ることはありません。漫画や雑誌、勉強のためのテキスト類を除くと、純粋に読書をしている人は1車両に何人もいないように思います。

テレビ、メールやインターネット、ゲームなどは中毒性があるように思います。気がつくと驚くほどの時間が経っていて、1日が終わってしまったり、社会活動や学習などより優先するべき活動が妨げられている様子もみられます。仮に、テレビもスマホもゲームもない1週間があったらどうでしょう。あなたはどれぐらいの時間を余分に持つことができ、その時間で何ができるでしょう。

また子供の場合は特に脳が成長過程にあるため、中毒になりやすいのです。

起きたらまずテレビの電源を入れ、電車の中ではずっとスマホを覗き込み、家に帰ってやらなければいけないことをやらずにまたは適当に済ませてまたゲームやインターネットに向かう、このように一日中離れられなくなったら要注意ですが、このような大人にならないためには、子供の時から本を読んだり、毎日決まった時間に一定のことをやる習慣づけが有効です。

仕事や家事で忙しく、ついテレビやDVDを観せてしまいがちですが、それと同じぐらい読み聞かせの時間も日常的にとってあげて欲しいと思います。

読み聞かせでやってはいけないこと

とはいえ、このように、読み聞かせの教育的な意味に関心を寄せるお母さんやお父さんがついしてしまいがちな、読み聞かせでやってはいけないことがあります。絵本を読み聞かせることには確かに素晴らしい教育的効果がありますが、あくまでも楽しいものでなくてはいけません。勉強することが目的ではないのです。ここを間違えると、子供が本嫌いになってしまいます。

1)感想を無理にきかない

読み聞かせの後、子供が絵本についてお話してくるかもしれません。それは感想かもしれないし、質問かもしれませんね。親子で一緒に話し合うのはとても良いことです。

だからといって、何も反応を示さない子がいけないわけではないのです。子供は読み聞かせの後、心の中で想像力を羽ばたかせているのです。「どう思った?」「これはどういうことだったのかな?」なんて読書感想文さながらの質問をしてはいけません。せっかく、動き出している想像の世界に割り込んで、台無しにしているようなものです。

2)文字を覚えさせようとしない

本好きの子は、自然に文字を覚えていくことが多いです。なかにはいつまでも絵にこだわり、あるいは読んでもらうことにこだわる子供もいるかもしれません。絵本はストーリーや絵と一緒にその中の世界を楽しむものです。

早くにひらがな、カタカナを覚える他の子を見て焦るお母さん、お父さんもいますが、結局全員小学校に入る頃には身につくのです。文字だけを教え込みたいならそれ用の勉強を別にした方が効果的でしょう。

3)自分で読むことを強制しない

読み聞かせでなく自分で読んでくれると楽だからなんて思わないでください。文字が読めるようになるのは4-5歳からですが、文字を理解し出して自分で文章を読むようになると、途端に子供の頭の中にストーリーが入って来なくなります。読むことは目から情報を取り入れることに専念してしまいがちなのです。

その後も読み聞かせは継続してあげて欲しいものです。読み聞かせは対話力と想像力を養います。

4)子供の好みを否定したり、親の思う「賢い本」を押し付けない

繰り返しますが、絵本は狭義での勉強道具ではありません。対話力、理解力、想像力などの知的活動の基本能力を伸ばしたり、喜怒哀楽というような感情を豊かにするものです。絵本以外にも日々の生活、対話、家の中で外で五感に触れるもの、全てから赤ちゃんはそのような学びを得るのです。絵本はそのうちの一つです。

読み聞かせのコツ

難しそう、幼稚園の先生みたいに上手に読めない、恥ずかしいなんて思っていませんか。上手に読めなくてもいいんです。子供は大好きなお母さんお父さんに読んで貰うことが嬉しいのです。

効果的な読み聞かせのポイントは次のようなものが挙げられます。

1)習慣化する

毎日決まった時間に読み聞かせをするのがベストです。忙しい日には短めの絵本にしたり読む冊数を減らしたり。お勧めは寝る前。決まった時間に眠る習慣もつきます。また、食事やおやつの後の団らんの時間も、読み聞かせに向いています。

2)スキンシップしながら読み聞かせる

膝の上に載せたり添い寝したり、体がふれ合ったりぬくもりが伝わる距離で読み聞かせましょう。場所はどこでも大丈夫です。ソファーに座って、カーペットの上で、座っても寝転んでも、子供がリラックスできる環境を作ってあげましょう。もちろんTVは消してくださいね。

3)ゆっくり読む

相手は乳幼児です。大人の普通のスピードは速過ぎます。ゆっくりと間をとってあげてください。大人は文字を読みますが、子供は耳から話をきき目で絵を追います。ゆっくりと絵を見て、耳から聞いたお話と結び付けたり絵を観察する時間をあげてください。絵本の絵は文章以上にたくさんのストーリーを物語ります。絵本は絵がとても大切です。

4)子供の好きな本を読んであげる

その子の好みが出てきます。それは素晴らしいことです。読んで欲しい、読みたいという本を読んであげましょう。

5)いろいろな本に触れさせる

4)と矛盾するようですが、子供の可能性を伸ばしいろんなことに興味を持たせるためにも、さまざまなカテゴリーの本を読み聞かせてあげましょう。知らなければ興味を持つこともできません。図書館にはいろんな絵本があります。お近くの図書館を是非、活用してください。

まとめ

読み聞かせはいつでもどこでも、始められます。親子の一番簡単で一番効果的な触れ合いであると同時に、子供の情緒、知識、体験の第一歩です。究極の早期教育である絵本の読み聞かせを、是非、毎日の子育てに取り入れてくださいね。