妊娠や出産は女性の人生にとって大きな出来事ですが、いざそのときになってみないと分からない言葉がたくさんあります。

今回は「胞状奇胎(ほうじょうきたい)」についてご紹介します。

胞状奇胎は妊娠初期のトラブルで、ほとんどの場合には妊娠が継続できなくなってしまいます。妊娠を望む女性は、予備知識を持っておくと良いかもしれませんね。

胞状奇胎とはなに?

胞状奇胎は妊娠初期に起こるトラブルで、受精卵が胎児と胎盤に分かれるときに始まるため、胎児がうまく成長できないことがほとんどです。1000人に1~2人の割合で起こります。

正常な妊娠の場合、受精卵が子宮内膜に着床し、胎児になっていく「胎芽」部分と、胎盤になっていく「絨毛」とに分かれていきます。胎芽から絨毛が木の根のように子宮内膜の中に伸びていき、栄養分や酸素を胎芽に送る働きをします。同時に、ホルモンの分泌を促し、妊娠の継続につとめる働きもします。

この絨毛だけが異常に増殖し、悪化するとさらに絨毛が水疱状に変化する病気が胞状奇胎です。子宮の内側をその水疱が埋め尽くすほどに増殖することがあります。肉眼的に見るとブドウの房のように見えるので、「ぶどうっ子」と呼ばれた時代もありました。

絨毛部分が異常増殖しても、胎芽部分も発育している場合もあります。このような場合を部分胞状奇胎と呼びます。胎芽部分は全く発育せず、子宮内を絨毛の異常増殖で占められている場合を全胞状奇胎と呼びます。

絨毛を形成している細胞ががん化すると絨毛がんとなり、悪性度の高い病気となってしまいます。そのため、胞状奇胎の診断がついたらなるべく早く治療を行う必要があります。

胞状奇胎が起こる原因

胞状奇胎が起こる原因はまだはっきりとわかっていません

1つの卵子に2つの精子が入ることや、受精時に卵子の核が不活性化してしまい、精子由来の核のみが増殖していくことなどが考えられています。

前者の場合には、双生児の片方が胞状奇胎になってしまったという状態のため、健常な側の胎児の染色体に異常がなければ妊娠を継続する場合もあります。しかし、先ほど述べたように絨毛がんとなってしまう危険性が高いため、本人の意向と医師の診断をよく擦り合わせた上での妊娠の継続となるでしょう。一般的には今回は処置をして、完治してから次の妊娠に期待することになります。

後者の場合は全胞状奇胎となり、DNA検査をすると父親の遺伝子情報のみで母親の遺伝子情報がないという場合に診断されます。

胞状奇胎の症状: つわりがひどいのに切迫流産の症状がある

妊娠初期に判明する胞状奇胎ですが、症状それぞれ自体はよくあるものです。つわりが重い、つわりが長い、茶色っぽい出血があるなどです。その一方でおなかの張りや腹痛といった切迫流産の症状もある場合、「妊娠初期症状だな」と軽く考えてしまうかもしれません。

通常の場合、切迫流産つまり流産しかかっている場合には絨毛から分泌されるホルモンが少なくなり、結果的につわりの症状は軽くなることが多いのです。胞状奇胎の場合には、絨毛が異常増殖しているわけですから、ホルモン分泌が多くなり、つわりが重くなります。このような相反する症状が同時にあらわれるのが、胞状奇胎の症状の典型パターンです。

しかし個人差がある上、ホルモン分泌量も通常通りであるケースも見られるので、通常の流産との判別は難しいものです。組織検査をしてみて初めて胞状奇胎であることが分かることも珍しくありません。まずは、超音波検査で胎のうが確認できない、心拍が確認できないといった場合に胞状奇胎を疑い、組織検査で判明することがほとんどでしょう。

胞状奇胎の治療: 除去手術

部分胞状奇胎の場合で、胎児が健常に発育していて、本人の強い意向がある場合には、分娩まで妊娠を継続することもあります。しかしこれはほとんどまれなことで、一般的には子宮内容除去術を受けることになります。

胞状奇胎の場合、子宮がかなりやわらかくなっているため、手術によって子宮に穴をあけてしまわないよう、5~7日ほど間をあけて2回にかけて行うのが通常でした。絨毛がんへの可能性を考慮して、子宮の内容物を完全に除去するためにも、2回に分けていたのです。最近では、初期の段階で見つかることが多いため、2回目の手術を行わないことも多くなっています。

手術後は、ホルモン量の経過観察を行います。基礎体温の測定とホルモン量の測定という、妊娠検査を同じような経過観察を行うわけですので、この間に妊娠してしまうと再発したのか妊娠したのか区別がつきにくくなります。そのため、術後は避妊をするようにして、医師から「もう大丈夫」と言われるまでは妊娠しないようにしましょう。

胞状奇胎の状態によっては、子宮壁にまで侵入していることがあります。これを侵入性奇胎と呼び、このような場合には内容除去術を行うだけでは処置できないため、抗がん剤を用いた治療や、子宮の全摘出することになります。もともと絨毛は非常に増殖能力が高い組織であり、しかも赤ちゃんを育成するための組織なので人体の免疫システムが抑制されるため、いろんな所へ飛んでいって悪影響を与えることがあるのです。

まとめ

次の妊娠について、「また胞状奇胎になるのでは?」と心配になる女性もいるでしょうけれども、胞状奇胎は染色体異常で起こることです。経過が順調なら大丈夫ですし、心配し過ぎてもストレスになって良くありません。普通と同じ様に考えていて良いでしょう。