妊娠中の女性の体は、さまざまな面で普段とは大きく様変わりします。

体調にも、妊娠中特有の変化が起こります。たとえばつわりがはじまったり、下痢や便秘になりやすくなったり、おなかが大きくなり重くなったせいで慢性的な腰痛に悩まされたりといったものも、妊娠時に特有の体調不良の例です。

そのなかに、「妊娠高血圧症候群」と呼ばれる症状もあります。以前は妊娠中毒症とも呼ばれた病気で、母体はもちろんおなかのなかの胎児への悪影響がある場合もあるため、あまく見ずにしっかり対処しなければいけない病気です。今回は妊娠高血圧症候群について、その原因や症状をはじめ、どのような治療が必要かなどについてご紹介します。

妊娠高血圧症候群とは?

妊娠高血圧症候群とは、その名前のとおり、妊娠中になんらかの原因で起こった高血圧のせいで、尿たんぱくや血管障害、臓器障害などの病気を発症する疾患です。以前は「妊娠中毒症」という名前でも知られていました。

妊娠高血圧症候群はその発症時期によってふたつの型に分けられており、妊娠20週から32週未満の時期に発症するものは「早発型」、妊娠32週以降に発症したものは「遅発型」と呼ばれています。より症状が重くなる傾向にあるのは、妊娠20週から32週の間に発症する「早発型」のほうです。症状が重くなると、母体にもおなかのなかのこどもにもいのちの危険のある、注意すべき病気です。

胎児への影響は、高血圧による血液の流れの悪さによって起こります。

妊娠後期、胎児の成長にともなって必要な血液量が増え、母体の血液量は妊娠前とくらべるとおよそ1.5倍にもなります。しかし、妊娠高血圧症候群になると血行が悪くなり、血液をとおして胎児に送るべき酸素や栄養が不足してしまいます。その結果、「胎児発育不全」「胎児機能不全」が発生する場合があります。また、低酸素症で脳に悪影響が及ぶことさえあるのです。

発症する確率は、妊婦全体のなかのおよそ3%から7%です。発症する確率はあまり高くないですが、発症する原因がまだはっきり解明されていないため、誰もが気をつけなくてはいけません。

しかし、いくつかの危険因子は発見されています。

  • 年齢が15歳以下、もしくは40歳以上の場合。
  • BMIが25以上の肥満体型の場合。
  • もともと高血圧、甲状腺機能障害、糖尿病などを患っている場合。
  • 母親が妊娠高血圧症候群を発症した経験がある場合。
  • 初めての妊娠の場合。
  • 多胎妊娠、胞状奇胎がある場合。

これらの要因を抱えている場合、妊娠高血圧症候群を発症する確率はより高いものとなります。こころあたりがある場合には、はじめからある程度対策を考えておくべきでしょう。

妊娠高血圧症候群の主な症状

妊娠高血圧症候群を発症すると、体にはさまざまな症状があらわれます。

高血圧になるのはもちろん、頭痛やめまい、倦怠感などが頻繁に起こるようになります。妊娠の経過にともない血圧がさらに上がると、尿タンパクが出るようにもなります。

また、より気が付きやすい自覚症状としては体のむくみがあげられます。ですが、むくみは妊娠高血圧症候群にかかっていなくても、妊婦には起こりやすい体の変化です。あくまでむくみは変化のひとつとして認識するにとどめ、先ほど挙げたようなより特徴的な変化が起きていないかどうか注意しましょう。

より重症化すると、症状もより重くなります。命に関わることもある子癇発作や、もともと正常な位置にあった胎盤が、胎児の出産前に子宮の内壁から剥がれて多量の出血を起こす「常位胎盤早期剥離」などが起きやすくなる上、脳出血や肺水腫、肝機能や腎機能の衰えや障害といった、妊婦以外の人にも高血圧によって引き起こされる症状が同時に起こる場合もあります。

気になる症状がある場合には血圧をはかってみるようにして、早期発見ができるよう普段から注意しておきましょう。

妊娠高血圧症候群の治療法とは?

妊娠高血圧症候群を根本的に治療しようとすれば、妊娠をやめることしかありません。つまり、予定日から多少早くてもおなかの中の赤ちゃんを帝王切開で取り出してしまうのが根本的な妊娠高血圧症候群の治療なのです。

しかし、妊娠34週以下のうちに発症してしまったときには、ほとんどの場合でおなかの中の赤ちゃんがまだ未熟で、取り出すことができません。母体、そして胎児に深刻な悪影響が起こる直前まで妊娠を継続させ、どのタイミングで分娩するのがベストかを考えなければいけないのです。

すぐにあかちゃんを取り出せない場合、もしくはさほど緊急性のない軽症の妊娠高血圧症候群だった場合には、基本的には食事療法で高血圧を解消していきます。

妊娠高血圧症候群の治療のみならず普通の高血圧の治療にも重要なことですが、高血圧の原因ともいえる塩分の摂取はなるべく控えるようにします。またたんぱく質も、「理想体重×1g」を目安に摂るようにしましょう。カロリーについても、自信のBMI値に合う食事量を意識して、一日分を三回に分けて食べるようにします。

食事療法にくわえ、血圧を下げる降圧薬や子癇発作を予防するための硫酸マグネシウムなどを投与することも、なるべく長く妊娠を続けるためには重要なことです。